自律とは、「放っておくこと」ではない
前回は、娘の「センター試験は受けない」という決断から、自律とは“自分主導で社会の枠を広げていく力”であることを書きました。
今回は、その自律が組織や子育てにおいて、どう育まれるのかを考えてみたいと思います。
まず、組織でよく耳にする「自律型人材」という言葉。その背景には、こんなニュアンスが含まれていることがあります。
- 上司が細かく言わずとも、勝手に動ける人
- 指示を待たずに、自分で判断して進める人
- 任せておいても安心な人材
けれど、これは本当の意味での「自律」でしょうか?
自律とは、“一人で何でもできること”ではありません。
むしろ、自分の判断が何に影響を受けているのかを自覚し、丁寧に問い直していく力です。
誰かに言われたから動くのではなく、かといって全てを自分の中で完結させるのでもない。
大切なのは、「今の私は、どんな“ものの見方”に立っているのか?」という視点を持ち、それを選び取ることなのです。
メタ認知という“思考のOS”を育てる
このときに必要になるのが、「メタ認知」の力です。
メタ認知とは、自分の思考や感情、行動を一歩引いた視点から観察し、
「どこに注目するか」「何を大切にするか」「どのような距離感で向き合うか」を選び取る力。
ただぼんやりと出来事を俯瞰するだけでは、気づきは限定的です。
意図的に視点を選び、自分の立ち位置を見極めることで、ようやく本質に近づけます。
これは、親として子どもと向き合うときにも、
上司として部下と向き合うときにも、まったく同じです。
表面的な行動の奥にある“構造”を観る
たとえば、返信の遅い部下がいたとします。
つい「やる気がないのでは?」「反応が薄い」と評価してしまいがちですが、
一歩引いて、こう問うこともできます。
- 「なぜ、返信をためらっているのだろう?」
- 「自分が“早く返せ”という空気を出していないか?」
- 「自分は“スピード重視”という偏った価値基準を持っていないか?」
このように自分自身の“認知のクセ”に気づけることが、対話の質を変えます。
メタ認知とは、単に「自分を振り返る力」ではなく、
「関係性のなかにある構造に目を向ける力」です。
本当の「自律」は関係性のなかで育つ
自律を育むには、単に「任せる」「口を出さない」だけでは足りません。
むしろ、
- どんな価値観に基づいて判断しようとしているのか
- どんな不安や迷いを抱えているのか
- どんな支援があれば、自分で一歩を踏み出せるのか
──こうした問いに伴走できる大人や上司の存在があってこそ、自律は育っていくのだと思います。
■あなたへの問い
あなたは今、誰かの言動に対して
「なぜそんなことをするのか」と反射的に評価していませんか?
そのとき、自分自身に問いかけてみてください。
「私は今、どんな“メガネ”でその人を見ているのだろう?」
そしてそのメガネを、一度外してみたら──
新しい対話が、始まるかもしれません。
Stay tuned for the next article!
