問いを変えれば、すべてが変わる。
見つけよう、その先の問いを。

#31 子育てとキャリア支援が“交差”した日

──外資製薬会社で気づいた「揺れる心」の構造

外資系製薬会社で、外部キャリアコンサルタントとして関わり始めた頃のことです。

優秀で、論理的で、成果を出している社会人たち。
けれど、面談の場に座ると、彼らは口を揃えてこう言いました。

「自分が何をしたいのか、よく分からないんです」

最初は意外でした。
これだけ能力のある人たちが、なぜ迷うのだろう、と。

話を聴いていくうちに、ある共通点が見えてきました。

「会社としては、この方向を期待されていて…」
「上司からは、こういうキャリアを勧められていて…」
「でも、自分が本当にやりたいことかと言われると…」

言葉は止まり、沈黙が落ちる。

本心が分からないのではなく、
本心をどこに置いていいか分からなくなっている状態でした。

そのとき、私はふと、思春期の娘との対話を思い出しました。

「本当はどうしたいの?」
そう聞くと、
「うーん…」と考え込みながら、
親の顔色をどこかで気にしているあの表情。

親の期待と、自分の本音のあいだで揺れる姿。

目の前の社会人と、構造が同じだと気づいた瞬間でした。

「正解」を探してしまう理由

面談の中で、よくこう聞かれました。

「どう思いますか?」
「どちらを選ぶべきでしょうか?」

正解を求める問い。

でもそれは、主体性の欠如ではありませんでした。
それが「評価」に直結する環境にいるからです。

会社の期待に応えられるかどうか。
上司の評価を落とさないかどうか。
正しい選択をしているかどうか。

それは、子どもが「親に認められる選択」を探す構造と、よく似ていました。

その瞬間、私の中で何かが繋がりました。

子育ては家庭の話ではなかった。
人が育つ構造そのものだったのだ、と。

「聴く」の意味が変わった瞬間

それまでの私は、子どもに対しても、学生に対しても、
「良い選択をしてほしい」と願っていました。

けれど外資企業での面談を重ねる中で、はっきりと分かったことがあります。

人は、「正しいアドバイス」で動くのではない。
自分の言葉が、自分の中から出てきたときに動く。

だから私は、答えを渡すのをやめました。

「あなたはどう感じている?」
「その選択をすると、どんな未来が見える?」

問いを返すたびに、ゆっくりと、その人の軸が輪郭を持ち始める。

それは、思春期の娘と向き合っていたときと、まったく同じ感覚でした。

子育てと人材育成の「交差点」

あの日、私は気づきました。

子育てと人材育成は、似ているのではない。
同じ構造を持っている。

  • 期待に揺れる心
  • 評価を気にする不安
  • 正解を求める習慣
  • 本音が言葉にならない時間

年齢が違うだけで、揺れ方は同じ。

そして、育てる側に求められるのも同じ。

焦らずに聴くこと。
評価よりも、理解を優先すること。
「どうしたい?」と問い続けること。

その瞬間から、私の仕事の意味づけが変わりました。

子育てはブランクではなかった。
それは、人が揺れながら育つ構造を、体感で学び続けた時間だったのです。

■あなたへの問い

あなたの周りにいる“迷っている人”は、
本当に能力が足りないのでしょうか?

それとも、期待と本音のあいだで揺れているだけでしょうか?

その揺れを、あなたはどう支えますか。

Stay tuned for the next article!

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